日本に古くから伝わる保存食の一つである干し柿は、皮を剥いた渋柿を干して作られるドライフルーツの一種です。ドライフルーツは、生の状態と比べ栄養が豊富に含まれていますが、干し柿にも同じことが言えます。
今回は、干し柿に含まれる栄養効果と、特性についてご紹介します。
豊富な食物繊維で腸内改善
干し柿には、食物繊維が100gあたり14gと、生柿と比べ5倍多く含まれています。食物繊維には不溶性と水溶性の2種類がありますが、干し柿に含まれている食物繊維の多くは水溶性です。不溶性食物繊維は便の嵩を増やすことから便秘の解消に、水溶性食物繊維はコレステロールの低下のほか、高血圧、糖尿病など生活習慣病の予防に効果があります。
干し柿にはミネラルが豊富
干し柿のように、ドライフルーツにすることによって、増える栄養素の代表がミネラルと呼ばれている成分です。干し柿には、次の9つのミネラルが含まれています。
カルシウム
カルシウムは、体重の1~2%の割合で含まれており、体内に最も多く存在している栄養素です。骨や歯を作る成分として知られていますが、その他にも、怪我をした際に血液が固まるのを促したり、筋肉の収縮を正常に保つなど、生命を維持するうえで重要な役割があります。不足すると骨粗しょう症や高血圧、動脈硬化の原因になります。
カルシウムは乳製品や小魚、野菜など、さまざまな食品に含まれますが、最大の欠点は、非常に吸収率が悪いことです。一番吸収率が高いと言われている牛乳で約40%、小魚で約33%、野菜に至っては、約19%しかありません。ビタミンDやマグネシウムと一緒に摂ることで吸収率を上げることができます。
カリウム
カリウムは、ナトリウムと連携して血圧の上昇を防いだり、筋肉や細胞が正常に動かすように促す効果があり、身体を良い状態に保つように働いている、健康でいられるために欠かせない成分です。果物の中では、アボカドが100gあたり720mgと、最も多く含まれています。生柿の含有量は、100gあたり200mgと、アボカドには足元にも及びませんが、干し柿にすることで、アボカドに匹敵するほどの含有量になります。
ナトリウム
ナトリウムは、カリウムとともに体内の水分量や体内の筋肉の動きを調節したり、神経を正常にするなど、カルシウム同様、生きていく上で非常に重要な役割をしています。しかし摂りすぎると、むくみや高血圧の原因になりますので注意が必要です。カリウムと合わせて摂ることをお勧めします。
マグネシウム
カルシウムやリンとともに、骨の形成に関わっている成分です。体内のカルシウムやナトリウムの量を一定に保ち、血圧や血液の流れを正常にする効果があります。癌や動脈硬化などに代表される生活習慣病の予防にも効果があるとされています。
リン
カルシウムの次に、体内に多く含まれているミネラルです。カルシウムやマグネシウムとともに骨や歯を作っている成分です。また、ビタミンB1と結合し、エネルギーを作り出しています。リンは、バランスのよい食事をしていれば、不足することはまずありません。しかし、加工品やジュースなどに添加物として含まれることが多いため、近年、摂りすぎの傾向にあります。
カルシウムとリンは、1:1のバランスで摂るのが理想とされています。リンを過剰摂取すると、ホルモンのバランスが崩れ、骨がもろくなったり、腎臓に負担をかける場合があります。
鉄
鉄は、血液の赤い色の構成成分である、ヘモグロビンを作っている主な成分です。肺で酸素と結びつき、酸素を全身に運んでいます。また、血液の酸素を筋肉にため込む効果もあります。鉄には、動物性の食品に含まれる「ヘム鉄」と植物性の食品に含まれる「非ヘム鉄」があります。非ヘム鉄はヘム鉄に比べると、吸収率が悪いのが欠点ですが、たんぱく質やビタミンDと一緒に摂ることで、吸収率を上げることができます。
亜鉛
感染症や生活習慣病予防、肌や髪を美しく保つ、精神を正常に保つなど、人が生きていく上で、大切なさまざまな機能に関わっている成分です。体内に貯蔵することができないため、欠かさず食事から摂る必要があります。不足すると、成長不良や免疫力低下などさまざまな症状が現れますので注意が必要です。
銅
銅は、鉄とともにヘモグロビンを作っている成分であり、別名「血のミネラル」とも呼ばれています。鉄の代謝を促し、鉄の利用を促進させるため、貧血の予防に効果的です。血中の活性酸素を除去する酵素であるSODを作るほか、10種類ほどの酵素の材料に欠かせない成分です。また、コラーゲンの生成にも関わりがあり、骨や髪、皮膚、血管などを健康に保つ効果もあります。
マンガン
マンガンは、カルシウムやリンとともに骨の形成に関わっている成分です。また糖質や脂質の代謝を助ける酵素に対して、活性化を促す役割もあります。摂取量が非常に少ないため、通常の生活をしていれば、まず不足することはありません。
ベータカロテンで身体のさび付きを防ぐ!
干すことによって濃縮され、含有量が増える栄養素は多くありますが、その1つがベータカロテンです。干し柿には、生柿の約5倍量にあたる100gあたり1400㎍のベータカロテンが含まれています。その含有量は、健康野菜として知られているブロッコリーの約2倍にあたります。
ベータカロテンという名称は、1度は聞いたことがあると思いますが、濃い野菜に多く含まれている、色素の成分のことです。ベータカロテンには高い抗酸化作用があり、免疫力の強化や生活習慣病の予防に効果があります。また、ベータカロテンは、必要な分だけビタミンAに変換されるという特徴がありますので、目や粘膜、皮膚を正常に保つ効果も期待できます。
葉酸で血液や細胞を正常に
干し柿には100gあたり35mgの葉酸が含まれています。葉酸は、ビタミン12とともに赤血球の生産を促すため、別名「造血のビタミン」と呼ばれています。また、細胞の生成や再生に関わりがあり、発育や成長には欠かせない成分でもあります。
特に成長が著しい胎児にとっては、必要不可欠の栄養素でもあるため、妊娠中の積極的な摂取が推奨されています。
干し柿にすることで減ってしまう栄養素
柿に豊富に含まれている栄養素として、真っ先に思い浮かぶのは、やはりビタミンCではないでしょうか。先述の通り、ドライフルーツにすることによって、多くの栄養素が増えますが、いっぽうで減るものもあり、その代表となるのがビタミンCです。
渋を抜いた生柿と比較すると、生柿では、100gあたり55mg含まれているビタミンCは、干し柿にするとたった2mgになります。ビタミンCは、水溶性で酸素や熱、光などで壊れやすく、非常にデリケートです。これは干し柿に限ったことではありませんが、ドライフルーツすることで、ビタミンCの含有量は少なくなってしまうのです。
さて、今回日本の伝統食「干し柿」の優れた栄養効果と特性5選について紹介しましたがいかがでしたか。水分が抜けて栄養が凝縮している干し柿は、生の柿と比べるとかなり小さくなります。しかし、その見た目とは裏腹に、大きさにもよりますが1個あたり約100kcalほどと、意外に高カロリーです。くれぐれも食べ過ぎには注意してください。
日本の伝統食「干し柿」の優れた栄養効果と特性5選
- 豊富な食物繊維で腸内改善
- 干し柿にはミネラルが豊富
- ベータカロテンで身体のさび付きを防ぐ
- 葉酸で血液や細胞を正常に
- 干し柿にすることで減ってしまう栄養素